バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなバイク関連のキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は冬用ライディングウエアの中綿素材に使われる『人工羽毛』を解説しよう!

“2025-2026年の年越し宗谷岬アタック”真っ最中の筆者の愛機WR250R。道中見かけた電光掲示板の最低気温はマイナス8.1℃が最大だったが、もっと寒く感じるところもあった! 空に雲がなくなって晴れた瞬間、放射冷却で一気に気温が持っていかれる感じ。こんな過酷な環境で『人工羽毛』採用のインナーウエアを使ってみた!!
そもそも『人工羽毛』とは?
『人工羽毛』とは、文字通り“人の手で作り出した羽毛のような素材”。羽毛と同様、綿状にすることでたくさんの空気を溜め込み、表面を透湿防水素材や防風素材で覆うことでデッドエア(滞留する空気)の層を確保。このデッドエアを己の体温で温めることで高い保温性を発揮させる……というのが現代の防寒対策におけるレイヤード理論の根幹だ。

バイク用品メーカー・ラフアンドロードが厳冬期用ライディングウエアで採用するプリマロフトも『人工羽毛』の一種。ダウンは水鳥の羽毛を使う天然素材であるのに対し、『人工羽毛』は極細の化繊素材(ポリエステルなど)で綿を作りデッドエアを確保。
しかも天然素材であるダウンとは違い、化繊、それもペットボトルなどのリサイクル素材で作られることも多い『人工羽毛』はダウンより価格が安価。“お値段以上!”のキャッチコピーで有名なあの掛け布団の中綿素材も『人工羽毛』であり、中には“ダウンよりも2倍暖かい”なんてキャッチコピーも踊っていたりしてなんだか凄そうなのだ。

今回、筆者は“2025-2026年の年越し宗谷岬アタック”において、プリマロフト素材を採用したラフアンドロード製『RR7995 WGプリマロフト®チタンインナージャケットカフ付き』と『RR7993 WGプリマロフト®チタンインナーパンツ』を着用。極限状況での『人工羽毛』の実力を確かめてきた!
『人工羽毛』のなにが凄いの!?
もはや暖かさだけなら『人工羽毛』はダウンに勝る!!

バイク用ライディングウエアとしては、シンサレート(米・3M社)やプリマロフト(米・プリマロフト社)といった『人工羽毛』素材を見かける。写真はラフアンドロード製『RR7995 WGプリマロフト®チタンインナージャケットカフ付き』で、インナーウエアとしては意外と薄手なのがわかる。

レッドバロンのオリジナル用品ブランド・ROMのバイク用電熱グローブ『ゼロスグラブ ヒート2』の甲側中綿素材にも『人工羽毛』のシンサレートが採用されている。
二輪媒体のフリーランスライターという職業柄、ライディングウエアメーカーを取材することも多い筆者。ラフアンドロードが採用するプリマロフトに限らず、様々なメーカーでこの『人工羽毛』の採用が進んでおり、ウエアメーカーの開発スタッフへ取材していて驚くのは、「『人工羽毛』はその暖かさにおいて、もはやダウンを凌ぐ」なんて話をよく聞くこと。つまりどちらが暖かいか? で言えばダウンより『人工羽毛』の方が暖かいらしいのだ。
さらに驚くのは、『プリマロフト®チタンインナージャケット&パンツ』も手に取ってみると意外に薄いことである。少なくともよくあるダウンウエアやインナーのようなモコモコ&ふっくら感は皆無。“こんなにペラペラのインナーでマイナス10℃近くまで下がる年越し宗谷岬に耐えられるのだろうか?”……なんて最初は思ったのだが、使ってみればこの薄さでダウンインナーと同じくらいの保温効果があると感じた。この薄さでダウンに匹敵する暖かさがあるのだから、『人工羽毛』の方が暖かいという話も実体験として十分納得できた次第だ。

ラフアンドロード製『RR7995 WGプリマロフト®チタンインナージャケットカフ付き』は、『人工羽毛』だけでなく、その名のとおり裏地にチタンを蒸着させて熱の反射力をアップ!! ラフアンドロード製アイテムの中でも“最も暖かいインナー”という触れ込みだ。
ただ、『人工羽毛』には暖かいゆえの弱点もあった。『人工羽毛』はダウンに比べて内部がムレやすく、発汗を伴うような状況ではすぐに脱ぎたくなるのだ(笑)。まぁ、筆者はもともとかなりの発汗体質ということもあると思うが、『人工羽毛』を着用していると“適温快適”→“ムレて不快”への過渡特性が天然素材のダウンに比べてかなりピーキーな印象を受ける。
どうやらこれには『人工羽毛』素材そのものの吸湿性能の低さが大きく関わっている模様。2年前の年越し宗谷岬アタックではダウン素材のインナーウエアを使ってみたのだが、発汗時の吸湿による快適性はダウンの方が優れていて、ウエアを脱ぎたくなるような状況は少なかったのだが、『人工羽毛』の場合は少し運動するとアウターのベンチレーションを開けたり、着込んでいる服を脱ぐなどの体温調整をしたくなることが度々あった。……とは言っても、マイナス気温の極寒ツーリングで“暑いから脱ぐ”とか“ベンチレーションを開けたくなる”、なんてこと自体が幸せすぎる悩みではあるのだが(笑)。

脇道に良さげな雪溜まりを見つけて突入! からの押し引きラッセル、なんてことをやっているとすぐにウエアを脱ぎたくなる……くらい『人工羽毛』は暖かい。
『人工羽毛』なら雨に濡れても大丈夫!!
今回の“年越し宗谷岬アタック”で大変だったのは、北海道上陸後の雨だ。まさか年末年始の北海道で本格的な雨に降られるなんて想定しておらず、ちゃんとしたレインウエアを用意してなかった。唯一保険として持って行ったポンチョも、より装備の弱い仲間に貸してしまったりで、上半身に関してはアンダーウエアに雨水が染みてくるくらいしっかりウエアを濡らしてしまった。

12月29日、30日はなんと雨に見舞われた今回の“年越し宗谷岬アタック”。雨はもちろん、路面からの水ハネも酷くて、ブーツからウエアまでしっかりずぶ濡れ。凍傷になりたくないので、交換できるものは濡れたそばから交換し、宿では全力でギヤを乾かした。
こんな状況で着ているインナーウエアが天然素材のダウンだったらどうなっていたか? 水濡れでベッチャリ潰れてしまったダウンは残念ながら保温力ゼロである。しかもダウンは濡れた場合に乾かしにくく、ちゃんとメンテナンスしないと保温力も戻りにくい。ダウンは水濡れに対して極端に弱いのだ。
その点、『人工羽毛』のプリマロフトは水濡れするようなことがあっても中綿が潰れるようなことがなく、濡れた状態でもかなりの保温力を保っていることを実感。手入れに関しても宿で干せばすぐに乾いて、次の日の朝にはパリッとした状態で走り出せたのだ。

『人工羽毛』はその特徴にうたわれるくらい、水濡れに強く乾きも早い。これまでは“汚れたら『人工羽毛』は気軽に洗濯できるのね……”程度の特徴に思っていたが、“濡れても保温力がなくならない”、“乾きが早い”という特性は“年越し宗谷岬アタック”のような極限状況でこそ絶大な効果を発揮するのだ。
これがダウンだったら……、雨で著しく体温を奪われることはもちろん、宿に入ってウエアを乾かしたにしても、ダウンが潰れてダマになってしまい元の保温力まで機能が戻ることはなかっただろう。そんな状態でマイナス気温下の宗谷岬を目指したらどうなっていたか? 今回のアタックは間違いなく『人工羽毛』であるプリマロフトに救われたというワケだ。
ということで、『人工羽毛』ならではの暖かさはもちろん、雨や雪に降られることもあるバイク用ウエアとしては、ダウンよりも遥かに使いやすいと感じた『人工羽毛』。“年越し宗谷岬アタック”のような極端なツーリングをするかはともかく、冬も元気に走りたいというライダーは一度この『人工羽毛』素材のインナーウエアを試してみてはいかがだろうか?

『人工羽毛』プリマロフトを採用したラフアンドロード製『RR7995 WGプリマロフト®チタンインナージャケットカフ付き』&『RR7993 WGプリマロフト®チタンインナーパンツ』のおかげで、終始快適に走ることができた今年の“年越し宗谷岬アタック”。この十分すぎる結果をもって、僕はエクスペディションな極寒ツーリングのデフォルト装備に、このプリマロフトのインナーウエアを加えることを決めた。
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