バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなバイク関連のキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は『2ストロークエンジン』をピックアップ。現代において、オフロードコンペモデルの分野以外では、ほぼ絶滅しているエンジン形式だ。

そもそも『2ストローク』エンジンとは?

2026年6月に突如発表されたカワサキのKX327X。カワサキのオフコンペモデルにフロント21インチのフルサイズ車体を持った『2ストローク』モデルが登場するのは19年ぶりのことだ。

2026年6月に突如発表されたカワサキのKX327X。カワサキのオフコンペモデルにフロント21インチのフルサイズ車体を持った『2ストローク』モデルが登場するのは19年ぶりのことだ。

 

年々厳しくなる排出ガス規制の煽りを受けて、『2ストローク』エンジンのバイクが公道から消えて幾年月。筆者が二輪業界に入った2000年代初頭には、『2ストローク』車の50ccMT車やスクーターがラインナップに残っていたが、あれから四半世紀が経った現代では、公道で『2ストローク』モデルを見かけることは稀だ。

現代において、かろうじて『2ストローク』エンジンが生きながらえているのは、ナンバーを必要としないオフロードコンペモデルの世界くらい。KTMなどの一部の外車オフロードバイクメーカーには、『2ストローク』モデルがラインナップしており、インジェクション化などに取り組んでいるものの、国内メーカーは正直なところ“既存の『2ストローク』エンジンの延命”的なラインナップにすぎない感じ……。

そんな状況の中、カワサキからフルサイズの『2ストローク』エンデューロマシン・KX327Xが登場。しかもエンジンは新設計で、吸気方式もキャブレターではなくフューエルインジェクションを採用しているというから驚きである。

カワサキ・KX327Xの『2ストローク』エンジン。エンデューロ系モデルとして6速トランスミッションを採用し、精密な燃料および点火マッピングにより、極低回転から高回転まで急激なトルク変動の少ないリニアな特性を実現しているという。

カワサキ・KX327Xの『2ストローク』エンジン。エンデューロ系モデルとして6速トランスミッションを採用し、精密な燃料および点火マッピングにより、極低回転から高回転まで急激なトルク変動の少ないリニアな特性を実現しているという。

 

『2ストローク』エンジンのここがスゴイ!

4ストロークエンジンよりも高出力!

『2ストローク』エンジンを説明する前に、まずは「4ストローク」エンジンの仕組みからおさらい。ということで、まずは「4ストローク」エンジンにおける、「①圧縮」、「②燃焼」、「③掃気」、「④吸気」の動きを解説した動画を見てほしい。

 

①圧縮:吸排気バルブが閉じられた状態でピストンが上昇することで混合気を圧縮。
②燃焼:圧縮された混合気に点火することで膨張が開始。ピストンが勢いよく押し下げられクランクシャフトを回転させる。
③掃気:その動力を使ってピストンが上昇すると、排気バルブが開いて排気ガスが押し出される。
④吸気:ピストンが下がる際には今度は吸気バルブが開き、シリンダー内部に混合気を吸い込む。

…つまり、「①圧縮」、「②燃焼」、「③掃気」、「④吸気」の工程を4回のピストン上下、つまり2往復を1サイクルとして連続運転しているのが「4ストローク」エンジンだ。

「4ストローク」エンジンは、「①圧縮」、「②燃焼」、「③掃気」、「④吸気」と、ピストンが2回往復している。

「4ストローク」エンジンは、「①圧縮」、「②燃焼」、「③掃気」、「④吸気」の、ピストンが2回往復している。

 

では『2ストローク』はというと、“ピストンの上下運動1往復”で、「①圧縮」、「②燃焼」、「③掃気」、「④吸気」の工程を完了。エンジン回転数が同じ5000rpmであっても、「4ストローク」エンジンは半分の2500回しか「燃焼」しないのに対し、『2ストローク』エンジンはきっちり5000回燃焼する。

つまり、同じ250ccの排気量であっても『2ストローク』エンジンは、「4ストローク」エンジンの倍の数の燃焼を行っているから、そのぶんハイパワーというわけなのだ。

『2ストローク』エンジンは、ピストン1往復で「①圧縮」、「②燃焼」、「③掃気」、「④吸気」の工程を完了。

『2ストローク』エンジンは、ピストン1往復で「①圧縮」、「②燃焼」、「③掃気」、「④吸気」の工程を完了。

 

また、「4ストローク」エンジンに対して倍の燃焼を行っているため、エンジンの出力特性がピーキーでエンジンサウンドも甲高い傾向にあるのが『2ストローク』エンジンの特徴。

 

4ストロークエンジンよりも軽量コンパクト

『2ストローク』エンジンには吸・排気バルブがなく、シリンダーヘッドをコンパクトにできる。写真はKTMのフリーライド250Rで、シリンダーヘッドにはプラグぐらいしかないのが見て取れる。

『2ストローク』エンジンには吸・排気バルブがなく、シリンダーヘッドをコンパクトにできる。写真はKTMのフリーライド250Rで、シリンダーヘッドにはプラグぐらいしかないのが見て取れる。

 

また『2ストローク』エンジンは、“ピストンの上下運動1往復”で、「①圧縮」、「②燃焼」、「③掃気」、「④吸気」を行う性質上、吸・排気バルブを持たない。このため、『2ストローク』エンジンは、「4ストローク」エンジンよりも遥かにコンパクトで軽量なエンジンを作ることができる。

『2ストローク』エンジンはシリンダーへの燃料供給の仕方も独特。クランクケース内部に混合気を送り込み、ピストンの上下運動による圧力で混合気をシリンダー内へと送り込んでいる。

『2ストローク』エンジンはシリンダーへの燃料供給の仕方も独特。クランクケース内部に混合気を送り込み、ピストンの上下運動による圧力で混合気をシリンダー内へと送り込んでいる。

 

『2ストローク』エンジンは排ガスのクリーン化が難しい

コンパクトでハイパワーと、バイク用エンジンとしては非常に効率が良さそうに思える『2ストローク』エンジンだが、デメリットもある。まず第一に「4ストローク」エンジンのように圧縮比が高めにくい。混合気を1/14くらいまで高圧縮できる「4ストローク」エンジンに対し、『2ストローク』エンジンはせいぜい1/8とか1/9くらいまでしか圧縮比を高められず、ガソリンの持つエネルギーを最大限取り出すことが難しい。

また、吸・排気バルブを持たないため、「①圧縮」、「②燃焼」、「③掃気」、「④吸気」の工程をきっちり分けられず、未燃焼ガスが排気ガスに混ざりやすい。その上、クランクケース内部に混合気を送り込む構造上、燃料にオイルを混合して潤滑する必要がある。エンジンオイルも燃やしながら走るため、排気ガスが「4ストローク」エンジンに対して汚れやすいのだ。

環境問題が取り沙汰される現代では、この排気ガスの汚さが『2ストローク』エンジンの大きな課題となっており、2000年くらいを境に公道からナンバー付きの『2ストローク』モデルが消えたのは、排気ガスのクリーン化が難しかったから。

そんな『2ストローク』エンジンならではの課題をクリアするために、KTMやカワサキなどが取り組んでいるのが、『2ストローク』エンジンのインジェクション化。前時代的なキャブレターではなく、必要な分だけ燃料噴射するインジェクションを採用することで、より排気ガスをクリーン化しようというわけである。

 

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